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実は昨日は、サントリー美術館で「酒呑童子 ビギンズ」展も見てきたのだけど(素晴らしかった)、感想を書く余力なし。
また明日以降、気が向いたら……

Toshiyasu Oba

サントリー美術館「酒呑童子ビギンズ」展(会期:2025年4月29日~6月15日)
suntory.co.jp/sma/exhibition/2
の感想を忘れないうちに。ちょっと雑なのはご容赦を。

もちろん展示の目玉は修復が完了した「酒呑童子絵巻」サントリー本。狩野元信の手になる見事な絵巻で、見事な色彩。迫力のあるバトルシーンも鮮やか。
それに加えて、小田原北条氏が関わった制作背景も明確で、その後の所有者や貸し出し記録も残り、詞書の部分も誰が書いたのか明確に分かっていたり、とにかく関連情報の豊富さがすさまじい。こんなに色々分かっている絵巻はそうそうないのではないか。

さらに、サントリー本を踏まえつつも、やや視点を引いて遠景から見せる構図や、淡い色彩に特徴を示す、狩野探幽系統の「酒呑童子絵巻」の写本(探幽自身の手になるものは現在所在不明とのこと)との比較もあり、サントリー本から派生していく写本群も含めて楽しむことができる。

さらに、明治期にドイツに渡り、その後ほとんど存在が知られていなかった、ライプツィヒ・グラッシー民族博物館所蔵の、住吉廣行筆「酒呑童子絵巻」(ライプツィヒ本)も里帰り展示。
ライプツィヒ本そのものに加えて、日本で発見された下絵や、その下絵から新たに住吉家によって作られた別の写本も交えつつ、展示するシーンを重ねたり、ずらしたりしていて、同じシーンを比較したり、あちらで見られないシーンをこちらで見たり、みたいな組立になっていて、あっち見てこっち見て、と比べながら見ていると何とも忙しい感じに。

なお、ライプツィヒ本の系統では、酒呑童子誕生に至るエピソード0的な話が前段に加えられていて、そこで描かれる幼き日の酒呑童子は、割と不幸な身の上だったりする。罪を犯したものの背景を掘り起こしていく、鬼滅の刃的な物語のあり方の源流を見た感じも。

他にも、登場人物たちが登場するスピンオフ的な作品を取上げたりと、結果的に、物語受容の現代との共通性が浮かび上がる展示後世になっていた。写本によっては、構図はほぼサントリー本と同じなのに、ディテールの描き込み部分が変わることで、結構印象が変わる、というのも興味深し。

終盤は、様々な記録を通じて、サントリー本がどのように受け継がれ、受容されたのか、後世への影響も含めて示していく渋い展開で、サントリー本を取り巻く関連資料の厚みをうかがい見ることができた。割と血なまぐさいし、若い女性が何人も鬼たちの犠牲になる(殺されて食われたりしている)「酒呑童子絵巻」が、何故、嫁入りの際の縁起物として珍重され、数々の写本が作られたのか、という理由も分析されていて、そこも興味深かった(あんまり書くとネタバレになるけど、徳川家の女性たちとの関係が重要だったり)。

余談だけど、一時、同じ所有者のもとにあった、「後三年合戦絵巻」(現在は東京国立博物館蔵)も、ちょっと展示されていて、彩色の剥落状況の違いを見ることもできる。それにしても、「後三年合戦絵巻」の壮絶な戦いの表現は赤裸々で、手足、頭の切断された様子がリアルに描かれていて、驚いた。後世の写本は見たことあったけど、何世代も写しが間に入っていたのか、そこまでの印象はなかったので。

あ、あと、オーディオガイドは、文字の展示解説に出てこないネタを解説の中でぶちかましてくるので、ちょっとお金かかるけど、できれば借りた方が良いと思う。サントリー美術館は、割とそういうことやるので、油断できない。

サントリーという企業については、微妙な気持ちもあるのだけれど、こういうものは、ちゃんと残していってほしいと願うばかり。