木庭顕氏の他の研究者への批判は、基本、そのやり方は精緻ではない、というもので、ところがその批判の記述も精緻ではない、という意味で雑なのは、まあ、そうかと(その分、読み物としては楽しく読めちゃうわけだけど)。
一方で、言論と法に基づく社会を維持するために、まず知的セクターが精緻に言葉を紡でいなければどうにもならない、という視点はやはり重要かと。その主張については、このくらい雑に書いてもらうと、自分レベルだと、やっと少し分かった気になるのだった(正直、主著の三部作とかまったく歯が立たない)。
とはいえ、このレベルの雑な議論では、社会を支えるには全く足りない、というのが木庭氏の主張でもある訳で、なんとも逆説的な本ではあり。宛先がない、というよりは、どこかに届いたとしても、役に立たないことが前提されているので。
木庭氏が、様々な研究者を叩きながら、一方で自らの敗北をやたらと強調するのも、嫌味ではなく、本当にそう思っているのだろうな、と思ってしまうのだった。