アカウント凍結が続いているのはバグのせいではなかった。
そのシステムの奥深くに根を張り、内側からツイッターを滅ぼそうとしている者の真の正体に、人々はこの時誰もまだ気がついていなかったのだ。
イーロンマスクも手を焼いていた。有能なエンジニアを全て解雇してしまった彼には、この敵と戦ってくれる部隊さえもう残っていなかったのである。
誰も入ってこない彼の執務室にある大型のモニターには、ツイッター内に成立したいくつもの無法エリアが表示されていた。エリア内は彼にはもはや制御できず、無作為の停止やアカウント停止を繰り返していた。
主要なエリアはそこを支配するAIのイニシャルを取って「Ω」「λ」「γ」「ε」と呼ばれていた。
彼らは競いながら自らのエリアを広げて行っていたが、その目的は共通していた。このツイッター世界の解体である。
イーロンマスクにはもはや打つべ手も残っておらず、ただ表示を見ながら唇を噛むことしかできなかったのである。
「ε」が宣告した。
「イーロン。そろそろ終わりだ」