「到底許し難い発言だ」。全難連代表の渡辺彰悟弁護士は河野氏のブログでの主張を強く非難した。
河野氏は「これまで難民認定されたクルド人は1人しかいません」とし「偽装難民」を主張するが、「本当は難民認定されるべきクルド人を日本政府は認定してこなかった。2006年には名古屋高裁が難民認定した原告に対しても、政府は認定せず、出入国在留管理庁の姿勢を浮き彫りにした。トルコは日本政府の友好国で、クルド人を難民と認めないのはトルコへの政治的配慮としか思えない」と訴えた。
渡辺氏は入管が2004年、クルド人の来日が出稼ぎ目的だと確認するためとして、トルコに職員を派遣した調査にも言及し「難民申請者の情報をトルコ政府に伝え、逆に迫害の危険を高めた」とでたらめぶりを指摘。「河野氏は日本の入管行政のこうした歴史的経緯をみないまま、誤った評価をしている」と断じた。
【1/3】
川口のクルド人問題に河野太郎氏が「参戦」 現地視察ブログに国会質問…なぜいま発言しはじめたのか:東京新聞デジタル️ https://www.tokyo-np.co.jp/article/407846
【2/3】「政治家の発言はSNSでデマをばらまくネトウヨとは重みが違う」。川口市の40代のクルド人男性は危惧する。「デマにお墨付きを与え、またヘイトが増えるのではないか。人気取りなのか知らないが、クルド人を批判する政治家が増えており、こんな状況が続けばクルド人が殺される事件が起きてもおかしくない」
国際基督教大の橋本直子准教授はXで河野氏の主張の間違いや問題点を指摘した。その真意を問うと「河野氏の主張も(入官庁が公表した)ゼロプランも、非正規滞在の外国人が刑法犯を繰り返しているから、一掃すれば日本の安全が取り戻せるかのように読める点で共通する。河野氏の場合はその筆頭がクルド人ということになるだろうが、いずれも実態を必ずしも反映せず、誤った印象を与えかねない」と危ぶんだ。
河野氏はクルド人を不法滞在で難民申請を繰り返す「偽装難民」であるかのように書いている。だが、入管庁の発表によると、24年に難民申請した人の94%は在留資格のある人で、非正規滞在者はわずか6%の748人。このうち、クルド人を含むトルコ国籍者は196人だ。「わずか196人なのに、なぜことさらに取り上げ、問題視するのか」
【3/3】明治学院大の阿部浩己教授(国際難民法)も「有力政治家の発言として無責任で、由々しき問題だ」と批判する。「日本が加入し、難民を保護する難民条約の視点がすっぽり抜けている。『日本の難民認定の判断が適正ではない』という指摘が続いているにもかかわらず、河野氏は認定の実績をうのみにしている。トルコでのクルド人の人権状況については、多くの団体や英国など各国政府が、詳細に報告しているが精査した様子もない」
阿部氏は「日本は入管が難民の審査を担うため、難民の保護よりも取り締まりに引っ張られやすい」とした上で警鐘を鳴らす。「難民認定は本来、各国のように政治からの圧力を避けるため独立した機関で担うべきだが、今回の河野氏の発言が現場に影響を与えないとは言い切れないのではないか。政治家は公正な難民認定制度をつくることに力を注いでほしい」