#ショートショート
『群れるクーラー』
ある所に今年の夏もクーラーなしで乗り切ってやるぞ!と張り切る男がいた。
クーラーを用意する金自体はあるのだが、世間に指図されると返って反発して買わないことを選ぶ困った男だ。
しかしこの災害級猛暑を前にしてはやはりそろそろ限界だった。
「流石に買うか…しかし」
扇風機をガンガン回した部屋で男が汗だくになっていると、ふわふわした雪玉のようなものが何個もどこかからか漂ってきた。
男が「雪玉」をつまみ上げるとそれは見たことがない"虫"だった。
男は気持ち悪がってすぐに「雪玉」を放り投げたが、あることに気付いた。
「妙だな、部屋が涼しいぞ」
調べてみるとどうもこの"虫"が冷気を送り出しているようなのだ。男はとても喜んだ。
「これは神様の贈り物か?それとも気候変動に適応した生物の進化か?こいつは天然のクーラーなんだ!」
男はこの"虫"を皆に分けてやろうと外に駆け出して気付いた。
「なんだ、この虫あちらこちらに飛んでやがる」
翌日、世界は大騒ぎだった。
『奇跡の虫現る!天然のクーラー!』
『気候変動に希望の光!』
この"虫"は暑さに苦しむ地域に現れては冷気を送り、気温を下げていた。
一部の人間は、この"虫"のせいで氷河期が来ると警戒したが、この"虫"の活動で地球の気温が返って下がりすぎるということもなかった。
突如現れた"虫"によって人類が気候変動、地球温暖化から救われて数年後…。
NASAが緊急の会見を開いていた。
「信じられないことですが、月面で火山活動が観測されました…」
「月の温暖化という奇怪な現象は数年前から確認されていましたが、このペースでは月が……燃える星になってしまいます…」
月が太陽になる…。
異変を前に世界の天体観測網が月面に向けられ、月にあるものが繁殖していることに気付いた。
それは大量の"虫"だった。
こちらの"虫"はどうやら熱気を、地球で蓄えた熱を放出する虫だった。
「なるほど月の虫は…室外機か…」
かくして地球は、人類は、第二の太陽に飲み込まれた。
こちらの本を読んで実践しました。
https://toot.blue/@mizuzameex/110836975864386607
マストドンは一投稿500文字なので、500文字に収めたい所でもあるんですが、やっぱり難しいですね。
逆に、起承転結発想なら500文字×4連投でもいいのかな?
X(旧Twitter)基準で考えるとマストドンの投稿一本は140文字×4くらいなので一投稿に収めたいとも感じるのですが…さすがに短いですねぇ…。